月とバイオリン
途端に、彼の手に奪い取られる。

はね退けられたシェリーは、壁に手をついた。

「なにをしに来たんだ、君は! 邪魔をするな! いったい誰なんだ? なんなんだよ。勝手に触るなッ」

「私の名前なら二度も言ったわよ。これはあなたよね」


 何もなかったように向き直り、彼の握る写真立てを横から覗いて指を差す。

彼は、見た。


そして目を――、


一点から離せなくなる。
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