月とバイオリン
 飾り門の前に並んで立つ二人の少年が、笑顔を向けている写真。

年の差は六つ七つはあるだろうか。

年上の少年の表情はどこか堅く、取っている姿勢も、写真屋の指示なのだろう、ぎこちない。

帽子とスクールのジャケットを身につけた彼には、目の前にしている今の顔にはすっかり消えてしまっている幼さが見えた。

写真からは夏の陽射しが伝わる。

背後に映る木々は生き生きと茂り、門を這う蔦の葉も勢いに満ちていた。

影は小さく足元に丸い。

夏も夏、真夏の光景。

明らかに兄弟だとわかる目を、年下の少年は眩しそうに細め、邪気のない笑みで真っ直ぐカメラを見ている。

怖れはなく、躊躇いもなく。


それは絶対的に愛されることを、知っている者の瞳だ……。
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