月とバイオリン
 重いのは風のせいだった。

窓が開かれているのだ。夏用の軽いカーテンが大きく舞い上がり、シェリーの姿を飲み込んでいた。

客を迎えると、生き返る。

いつもとはまったく様の違う部屋を見回しながらベッドに近づき、はみ出した小さな足を見下ろす頃、やっとシェリーが布から逃れて顔を覗かせた。

「窓を閉めて寝ないと風邪をひくわ。病気の時にベッドでおとなしくできないのだから、予防はきちんとしないとね」

腰に手を当て、厳しいお顔で、お姉様はそう言った。

「そんなことを言うのは、フレディね。お医者様よりずっとウルサイんだから。言うこと聞いてたら、一年の三分の一は私、ベッドの中にいることになっちゃう。あぁ、閉めないで。寝る時はちゃんと自分で閉めるから」

「まだ起きているの?」

「音楽が続いている間は、もったいなくて眠れないわ」

「音楽?」
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