月とバイオリン
 どうしても伝わらないだろうか。

わかってもらえないものなのだろうか。

人はそれぞれに悲しむものだ。

それはそう。それでも、悲しんでいることは同じだということが、救いとならないはずはないのに。


はずはない、そう思うことが思い上がりなのかもしれない。

自分の思いを押しつけることになるのかもしれなかった。

こうだからこうでしょう、と自分の枠にはめ込んで。


 けれどシェリーは、知って欲しいと思っていた。


会えないけれど側に居る。

忘れるけれど思い出す。

空気を感じる。

纏っていた空気を、今になっても。


そんな想いを、聞いてくれたならいいのに。

感じるあたたかさを、分け合うことができればいいのに。

それを知って欲しいと思うことは、ただ自分のわがままなのだろうか。

頷いて理解して、近寄って欲しいと思うのは。
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