月とバイオリン
ピーターの言葉が頭に浮かぶ。

『……のために生きているんだね』。

なんのために、と言ったのか、その部分がどこかへ行ってしまった。

記憶の海で、何かが飲み込んで逃げた。

魚?! どこなの?!


 探しても無駄だという判断は簡単だったのに、こんな時に未練が騒ぎ立てる。

見つけ出せさえしたなら、説得も可能かもしれない。

けれど捜索に当てる時間を、別の方法の組み立てに使う方が建設的だとわかっているのに。

理性的とは言えない、多分に感情で動いている。


 正しいと思えたなら。

空気は堅く、彼の硬質の結晶のような冷めた瞳は、これだけの言葉を引き出した今でも、最初と何も変わっていないように見える。

一条の光でも、見い出すことができたならいいのに。

かすかなきらめきが一瞬でも差したなら救われる。

光は希望に結びつくから。

そして一欠片でも光があったなら、欠片のままではいないから。

集まり、あふれて。

朝日のように。
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