月とバイオリン
「どうして君たちは僕に関わろうとするんだ……?」
彼は右手を下ろした。
左手の中で、ヴァイオリンは待っていた。
ジャックもこうして見上げただろうか。
兄の持つ木の命。
箱の中は空洞だと知っている楽器・ヴァイオリン。
その空間は、何かを満たすために空けられているものなのではないのか。
中に何もなくて、音は響きを持つことができるだろうか?
弦と弓とが踊りだすとき。
瞬間に、広がり包み込むオーラは、彼の手から伝わるもの……でしょう?
『カノンがいちばん、好きだよ』。
声を聞いたのね? あなたたち。
これは空想だろうか。
シェリーはわからなくなっていた。
何を見ているのか――彼の顔を。
今では自分のことを見返している彼の顔を。
彼は右手を下ろした。
左手の中で、ヴァイオリンは待っていた。
ジャックもこうして見上げただろうか。
兄の持つ木の命。
箱の中は空洞だと知っている楽器・ヴァイオリン。
その空間は、何かを満たすために空けられているものなのではないのか。
中に何もなくて、音は響きを持つことができるだろうか?
弦と弓とが踊りだすとき。
瞬間に、広がり包み込むオーラは、彼の手から伝わるもの……でしょう?
『カノンがいちばん、好きだよ』。
声を聞いたのね? あなたたち。
これは空想だろうか。
シェリーはわからなくなっていた。
何を見ているのか――彼の顔を。
今では自分のことを見返している彼の顔を。