月とバイオリン
光を一匙
天井を見上げ、大きなものの落下を見て、とんだヴァイオリンをつかまえた後、目を閉じてしまっていたらしい。
シェリーは恐々、目を開いた。
目を閉じる前の瞬間が浮かぶ。
伸ばされた自分の手と、間近にヴァイオリンを。
少しだけの過去から、拍を置いて移動した現在では、シェリーは胸に楽器を抱え持っていた。
逆さま……。
けれど、無事よね。
しっかりと持ちたいけれど、ぎゅうと抱きしめるのも壊してしまう結果となりそうで怖い。
落としてしまいそうで、身動きが取れない。
どこをどう掴んでいいものなのかわからないのだ。
楽器は繊細なものだと聞いているし、むやみにいじってはいけないと教育されてもいる。
「これは、どうしたらいいものかしら」
姿勢自体おかしな格好のまま、シェリーは持ち主の姿を探して首を回した。
扱いに長けている人物が側にいるのだから、押し付けてしまえばいい、のではなく、本人に返せば良いのだ、大切なものなのだから。