月とバイオリン
両手で頬を包み込まれ、発声は難しい状態だ。

本物……、ニセモノ?

 メアリーアンは時々おかしなことを考える、とシェリーはやけに冷静に考えてしまった。

そうさせている側であるという自覚は、迷惑なことに欠けている。

「リースはどこ? 一緒でしょう? メレディスと一緒に来たのよ。クリスに気づかれないうちにベッドに戻らなくちゃ」


 どこも何も、扉から真っ直ぐに正面がソファなのだから、これまで見つけていなかったことがおかしい。

探していた片割れを見つけて、舞い上がってしまっていたのだろう。

しかしリースはシェリーと違い、横たわり目を閉じている姿を見せていた。

驚いたシェリーが放り出してしまったため、片手がぶらんと垂れている。

「あら。眠って……るの?」

なぜ。この場で?

メアリーアンは、抑揚のない声で問いかける。

返る答えには、耳を塞いでしまった方が良いかもしれない予感があった。



――「どうなっているの?」
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