先生、あなたのことが好きでした。



  先生の授業はやっぱり楽しかった。

  あの頃と変わらず、いろんなことを話した。


  先生の学校のこと、好きな音楽のこと、本のこと、映画のこと、アニメのこと。

  本当にいろんな話をした。

  時折、真面目な話もした。

「あたし道徳の授業嫌い~」

「なんで?」

「だって、映像見せられて、みんな同じような感想書くだけだもん」

「あ~、確かに。あ、もし今家族の誰かが死にそうで、助けるには自分が死ぬしかないとしたら、どうする?」

「えっ……、自分が死ぬ……かな」

「それで助かった家族が、喜ばないとしても?」

「え……え~……わかんない……」

「ほら、そういうのを授業でやればいいと思わない?」

「あ、ホントだ!これだったら楽しいもん!」

  こんなことを考えるなんておかしい、と思う人もいるかもしれない。

  でもあたしは、ありきたりな授業なんかより、こっちの方がよっぽどいいと思った。


  あたしが先生を好きになった理由……。

  正直わかんない。

  顔がかっこいいとか、そういうのもあるけど。

  先生は“先生”としてもすごく素敵で、大好きだった。


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