先生、あなたのことが好きでした。



  ガチャッ……

「何だ、まだ帰ってないのか?」

「先生……」

  あたしの前に立っているのは、紛れもなく菅野先生だった。

  今がチャンス……。

  誰かがあたしにそう言った。

「先生、あのね!これ……」

  勇気を出して、ケーキを差し出す。

「悪りぃ……」

  え、何。

  断られた?!

「あのさ、今からトイレ行くから、後でもらってもいい?」

  なーんだ、トイレか。

  って、あたし最悪じゃん!

  先生が手ぶらで……なんて、トイレしかないじゃん!

  なのにケーキを渡そうとしたなんて……。

「じゃ、ちょっと待ってて」

  待ってて、だって。

  先生が待っててなんて言ってくれたぁ。

  あたし、ずっと待っちゃうよ。

  そんなことを考えながら、先生を待った。


< 27 / 32 >

この作品をシェア

pagetop