先生、あなたのことが好きでした。
え……。
今、なんて言ったの……?
「言ったっけ?」
またそう言われて、あたしは首を横に振った。
「あ、俺三月いっぱいで塾辞めるんだ」
そう聞いたとき、ふと頭に浮かんだものがあった。
先生、一人暮らししたい、って言ってた。
「一人暮らし、するの?」
「うん」
やっぱりね。
「よかったね」
あたしは涙を必死で堪えた。
先生にバレないように、必死に。
「ごめんな」
頭の上で声がする。
「え……」
「受験、見てやれなくて」
先生……。
受験なんていいんだよ。
傍にいてよ、これから先もずっと。
テストの点数見て怒ってよ。
子供が嫌がりそうなこと、もう一回言ってよ。
もっと他にない先生の考え方、聞きたいよ。
先生のオススメの音楽、教えてよ。
そう願ったって、もう無理なんだ……。