恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-
でも、あたしは自分の感情……とくに嬉しい感情を素直に表すような人間じゃなかったから、眞鍋さんに向かって、こう言った…、
「眞鍋さん、ヤル気あるの! あんな汚いレンズ、もう二度と流さないで! いい? 分かった?」
…って。
「ご、ごめん……でも、オレの作業工程はやること多くて、奈央ちゃんみたいにラクじゃないんだよ」
「別にあたしの作業工程だって、ラクじゃないよ」
「いや、奈央ちゃんの工程が簡単っていう意味じゃなくて、その……今は“弟子”に全部やらせてるからラクじゃね?」
「弟子?」
そーいうふうに考えたことはなかったんだけど、言われてみれば、渋谷祐二はあたしの弟子に違いなかった。
「あ~ァ、オレも綺麗なおねーさんのお弟子さんになって、ハイヒールとかムチでビシビシしごかれてぇなぁ」
「バカじゃないっ!」
あたしはこんなおバカさんと違うラインで働けるようになったことを神さまの救いと感謝した。