恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-
「まだ右手、痛いんですか?」
そのひと言さえ勇気がなくて訊けないあたし。
彼のことをもっと知りたい、そして自分のことも知ってもらいたい。
そう思いながらも勇気がなくて、恥ずかしすぎて、話しかけることができないでいたことは、あたしにとって眠れない週末の夜を重ねさせるほど悔しくてならないことだった。
週が変わって月曜日。あたしは今日も朝から新人の指導係として渋谷祐二の左後ろに立って彼の監督を続けていた。
“渋谷さん、あたしでも最初はなかなかうまくできなかったのに、すでにヨユーすら感じさせちゃってるよね。けっこー手先が器用なんだ。ココで働く前も、こーいう手先を使うような仕事をしてたのかな?”
あたしがそんなことを思っていると―――
「カタッ…」
不意に彼が右手に持っていたピンセットを床に落とした。
反射的にソレを拾おうとしたあたしの指先が、既にソレを拾おうとしていた彼の指先と一瞬だけど確かに触れ合った。
「…!」