恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-
彼に対するこの感覚はアレなんじゃ…?

まさか良樹とサヨナラしたばかりなのに、そのスグあとでアレしちゃうのかな?

…なんて自問自答を繰り返していたけど、もうソレは間違いなく“恋”だった―――



“恋をすると今まで見ていた同じ景色が全部違って見える”

そーいう感覚は、恋に恋する中高生にしかないものだと、あたしはずっと思ってた。

でも今、あたしの目には見慣れた社員食堂の風景さえいつもと違って見えていた。


「夏目さん、なんかいいことあった?」


お昼ごはんを一緒に食べていた星野さんが言った。

「別にィ。いいことなんてあるわけないじゃん。仕事も超つまんないし、ぶっちゃけ、もう辞めちゃおうかと思ってるくらい」

あたしは嘘をつきまくった。


朝、工場に来れば渋谷祐二と会える。

そして指導と称して一日中ずっと彼のそばにいることができる。

そのことだけで今のあたしには十分すぎるほどの幸せだった。
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