恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-
「さぁ、俺もそこまでは分んねぇけど、まっ、とにかく、がんばんなよ、奈央ちゃん」

「はァ…」

「なに? そのヤル気ない返事は。なんかやる前から諦めてるみたいじゃね?」

「だって、こないだ良樹と別れたばっかだし。恋に臆病になってる、ってゆーか……」

「あのさ、俺が競馬好きなのは奈央ちゃんも知ってるよね?」

「知ってるけど、それが…?」

「“どーせ当たんねぇんだから、いーかげん競馬なんか辞めたら?”とか言うヤツもいるんだけど、でも諦めて最初から馬券を買わなかったら、いよいよ当たらなくなっちまう」

「………」

「たとえ当たる確立がどうであろうと馬券さえ買ってれば、少なくとも当たる確立は0%じゃなくなる。“絶対に当たらない”なんて誰も断言できないはずだろ?」

「そーいえば、あたしが宝くじを買うときも同じことを考えてるよ、“買わなきゃ、ゼッタイに当たらない”って」

「俺みたいな競馬好きのバクチ打ちがエラそうなこと言えたガラじゃないんだけど、やらないうちから諦めるなんて“損”だよ」

「損…?」

「大損だよ。悪いことは言わない。今回は俺にダマされたと思って、彼に賭けてみなよ」
< 57 / 106 >

この作品をシェア

pagetop