恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-
あとは、バスタオルと帰りに着る下着の上下、それに小腹がすいたときのために100均ショップで買った“飴”を入れたバッグを肩から下げるだけ。

それがあたしのいつものスタイルだった。

なれない格好をすると、それだけで肩が凝る。


採用試験なんて、高校を卒業するときに今の仕事――つまりスイミングスクールのアルバイトインストラクターに就くために受けたとき以来のことだ。

それにそのときは、そこのスイミングスクールが、あたしが学生時代から通ってたところだったおかげで、面談をほんの数分やっただけで即採用決定になったから、本核的な採用試験は今回が初体験といっていい。


それにしてもこの緊張っぷりは、われながら異常だと思う。

学生時代、選手として水泳の競技会に出場したときだって、これほど緊張はしなかった。


なんてゆーか、あたし、こーいうのは苦手。

水泳なら自分のガンバリしだいでタイムを縮めることができるし、他の選手を追い抜くことだってできる。

でも採用試験って他人があたしのことを選ぶワケでしょ? 自分でどんなにガンバっても、最終的に判断するのは相手なワケだし、相手しだいでダメになることだってある。

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