恋合わせ -私じゃ…ダメなの?-
もとはといえば良樹との同棲を解消したくて、今の仕事に飛びついたワケだけど、今は渋谷祐二と顔を合わせるのが何より辛かったし、いっそ工場から逃げ出してしまいたい気持ちでいっぱいだった。

そーいう状況にあって今回の話は、まさに“渡りに船”のいい話だった。

だからこそ、あたしは本当に迷った。


“一晩寝ないで考えてからやった行動も、突然思いつきでやった行動も、起きる結果はどっちも同じ”


そのとき不意に母親のいつもの口ぐせが耳によみがえってきた。

今まで、あたしは“行動あるのみ”の精神で、あまり考えないで行動してきた。

でも、今回は自分の生活がかかってるワケだし、さすがにそーいうワケにもいかない。


考えに考えて、そして迷いに迷いはじめてからニ日目が過ぎたお昼ごはんのとき、あたしは社員食堂で渋谷祐二とすれ違った。

あたしと彼の職場は別々となり、また意識的に彼の製造ラインには近づかないようにしていたんだけど…。

でも、それでも廊下や休憩室でニアミスを起こすことは度々あったし、その度にあたしは星野さんとの会話に夢中で気づかないフリをして通り過ぎるしかなかった。

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