放課後ドロップ
少しだけ、先輩が目を逸らしたその瞬間に、いうだけ言ってみよう、と軽く思った。
伝わらなければ冗談にしてしまえばいい。
「「好き」」
です、と続けた言葉が尻すぼまりになっていく。
何の冗談か、それは同時だった。
嬉しいはずなのに。
同時過ぎて、笑えない。
本当ならいいと思う自分は押し潰されて冗談にしようと思う自分が前に出てしまった。
「冗談、デスヨ?」
「……俺のも冗談だから、気にするな?」
彼はふっと笑みを作る。
何も思ってないような、けど淋しそうというか。
そして何事もなかったように、一時的に私に向けられていた視線がノートに戻った。
そんな顔は狡い。
伝わらなかったら諦めよう、なんて中途半端な気持ちでいたのに、さらに中途半端になって揺らぐ。
もしかして、って。思う。
もうすぐしたら、卒業して大学に行っちゃうくせに。
もしかして、本当なの?
狡い、狡いよ…先輩。