久遠の花〜blood rose~雅ルート
「それかさ――血をくれよ」
以前にも聞いたことがある、悲しみを含んだ声。それまであった恥ずかしさは消え、心配な気持ちが込み上げてくる。
「どうしてそんなに――悲しそうな目をするの?」
公園での雰囲気に似て、その様子が儚げで。
「心が――泣いてる」
自然と手が、雅さんの頬に触れていた。
「――――っんだよ、アンタ」
力強く、体が引き寄せられる。しばらくすると、抱きしめた腕が、微かに震えているように感じた。
「あ、あのう……」
あまりにもしゃべらないから、声をかけた。それでも答えてくれないから、今更だけど、雅さんのことについて質問することにした。
「あれだけ走ったり、高く飛んだり――。み、雅さんは――何者、なんですか?」
「――――吸血鬼」
「えっ?」
「だから吸血鬼。人間から見たら、そーいう部類」
顔を見合わせ、いつものように笑う雅さんに、今度は私の方がなんて言っていいかわからなくなってしまった。
「美咲ちゃん、聞いてる?」
「は、はい。――あのう、吸血鬼って言うのは」
「もちろんホント。だからさっき、血が欲しくなったんだよね。ははっ」
笑いながら言われても……正直、説得力がない。
「叶夜君も、なんですか?」
「アイツはどーだろうねぇ? 血は吸わないと思うけど」
「でも今、吸血鬼って……」
「吸うヤツと吸わないヤツがいるんだよ。ま、それでもまとめて人間がそー呼んでるんだけど」
ここまで言われると、本当に本当なのかなって、ちょっとは考えてくる。
実際、あの身体能力を二回も見てるわけだし。
「――とりあえず、吸血鬼だっていうのはわかりました」
「じゃあオレに血、くれる?」
「そ、それとこれとは別です!」
血だなんて……そんなの怖い。
イメージからすると、牙で思いきり噛まれる気がするし。
「ならキスはどう? 口じゃなくておでこに」
「おでこ、ですか?」
「そうだよ。ホントは早く回復する為に口がいいけど、それで手を打つよ」
手を打つって。
なんだか、私の方からせがんでるように聞こえるんですけど。