久遠の花〜blood rose~雅ルート



 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ――!



 ただの音が、言葉へと変わる。
 聞き取れなかったそれは遠吠えとなり、一つの合唱と化す。



 憎い憎い憎い憎い憎い――!



 浴びせられる言葉は痛く、鋭い刃物を衝き立てられた感覚。



 頭が痛い。――死ね。
 胸が痛い。――シネ。
 心が痛い。――死ネ。



 止まりかける思考。
 甘ったるい、どろどろした黒いモノが、〝私〟という存在を麻痺させる。



 あぁ……こんっ、なの。



 脳の許容を、人の限界を超えてる。
 考える隙がないほど、この世のありとあらゆる闇。悪意と言われる感情全てが黒一色となり、一気に叩き込まれる。



 っ、……けて。



 ……たす、けて。



 声にならない声。
 言葉として発しそれは、人の耳に聞き取れるものだったのか。



 「――――ったく!」



 何か音が聞こえたと同時。頭が強制的に固定され、口の中になにかが流れてくる。



 これ、って……な、に?



 瞬きをすれば、徐々に視界がはっきりとしてきた。

 「飲み込め」

 言われるまま、口の中にあるものを飲み込んだ。
 すると、体が妙な感覚に囚われた。熱いような、胸が苦しいような――…。
 全身にその感覚が行き渡った時、もう、嫌な光景は見えなくなった。
 声も聞こえなくて、今聞こえるのは、雅さんの声だけ。



 「オレが――わかる?」



 ゆっくり、視線を絡ませる。見えたのは、真剣な表情をした雅さん。よく見れば、口元が汚れていた。



 これ、って……血?



 口の中が、鉄の味がする。ケガなんてしてないのに、どうしてだろうと思っても、まだ頭が回ってくれなくて質問できない。

「落ち着いたか。――そのまま寝てな」

 意識が薄れる。
 言われたからではなく、私はその感覚に、身を任せた。
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