久遠の花〜blood rose~雅ルート
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美咲が寝たのを確認すると、雅は家の周りを警戒した。
夜になっても、怪しい人物は見られない。これならもう大丈夫だろうと思い、雅は電話をかけた。
「もしもし。異常はなさそうなので、これで引き上げますね。――えっ、明日ですか? わかりました」
話を終わらせると、雅は街に向かって駆けた。
これからは、彼個人の目的で動く。
人通りが少ない裏路地。そこにいるのは、他人が何をしてようと気にしないような者ばかり。
身売りをする者。
薬を売る者。
雅は、怪しげな者が集まる巣窟に足を踏み入れ始めた。
「――――こっちか」
臭いを辿れば、行き着いたのはとある裏路地。そこでは、今まさに人が殺されそうになっていた。
「っ!? だ、だず、けっ――」
足下にすがりつき、懇願する女性。
泣きじゃくる彼女を見る雅の表情は、とても冷めていた。
「アンタはもう助からない。――自分を見てみな」
「っ!? あ、しが……」
「そう。もう膝も〝食べられてる〟。だから、アンタは助からない」
体に侵食していく何か。
黒い影のような、獣のようなカタチをしたそれが、女性の体をゆっくり咀嚼(そしゃく)していく。
「いやいやいやっ! 助けてっ、たずけっ、がぶっ!?」
女性の口から、血が溢れる。
浸食が腹まで達し、体の半分まで咀嚼されていた。
ばりばりと、骨が砕けていく。
その様を、雅はただじっと眺めていた。