久遠の花〜blood rose~雅ルート
「「「くっついちゃイヤ~!!」」
見るに耐えかねたのか、女子から一斉に非難の声が。
あかるさまに敵意を向けられ、私はもう、ここから逃げ出したい衝動に駆られた。
「美咲もすみに置けないねぇ~。カレシがいるなら早く言えばいいのに」
「ち、ちがっ! 本当、彼氏じゃないの!!」
「全力で否定しないでよ。傷付くじゃんか」
「そ、そんなの知りません! だいたい、どうして雅さんが学校に……」
「あれ、やっぱ覚えてないんだ? オレも、美咲ちゃんのそばにいられるようにしたんだよ。これからよろしく」
「私のそばに?と言うか――オレも?」
「そうそう。そのためには、学校にいるのが一番でしょ?まぁもうすぐ夏休み?とかで、学校も休みになるらしいけどさ」
今度はぎゅ~っと、前から抱き付かれる始末。恥ずかしいから離してほしいと言っても、雅さんはまったく聞く耳を持ってくれない。
「久々に会えたんだからいいじゃん。あ~もう、美咲ちゃんカワイイ!」
な、なんだか嫌な予感……。
満面の笑みを浮かべながら、徐々に顔を近付ける雅さん。何をするのか予想が付いた私は、咄嗟に両手で顔を覆った。
「ちょっ! まさかキス!?」
杏奈も気が付いたようで、驚きの声を上げる。
それに周りは一時無言となり、
「「「イヤァーーー!!」」」
またしても、悲鳴のような声が上がった。その後も口々に、落胆や苦情の言葉は続いていた。
も、もう! 叫びたいのはこっちだっていうのに!
逃げようとするものの、しっかり捕まっているから動けない。どうしたものかと困惑していれば、
「――ミヤビ!!」
大きく叫ぶ声が聞こえた。
「げ、ウルサイのが来た」
「いいから離れろ!」
背中に、やわらかな温もりを感じた。チラッと視線を向けてみれば、そこにいたのはクラスの男子で。私の体はすっぽり、腕の中に納まっていた。
「またジャマしに来たの?」
「「ジャマしに来たの?」じゃない! お前は近付き過ぎだ!!」
「アンタに言われたくないね。関係ないだろう?」
火花を散らす二人。訳が分からず、私は二人を交互に見ているしか出来なかった。
「な~んだ。〝そんなもの〟付けて、学校じゃ猫被ってるわけ?」
「お前と違って、制御してるんだよ」
「そんなの必要ないだろう?」
「あのなぁ……。ここに来るなら、お前にだって必要だろうが」
「イヤだね。アンタの命令なんて聞くつもりないし。――ってか、そんなの外しなよっ、と」
「っ!? バ、バカ!」
一瞬のうちに、雅さんは男子の背後へ回る。なぜそんなことをするのかと不思議に思っていれば、男子は片手で顔を覆い隠していた。
「だ、大丈夫、ですか?」
その問いかけに、返事は返ってこない。何がどうなっているかわからない私は、ただ心配するしかできなくて、
「ほら、早くこっち見なよ」
挑発する雅さん。それに男子はゆっくりと、覆っていた手を外す。
「えっ……なんで」
目の前の光景が、不思議でならなかった。だってそこにいるのが、まさかの叶夜君だったから。