暁に消え逝く星
「なぜ俺を助けた?」
「放っておいたら死にそうに思えたから」
「悪党かもしれないのに、うかうかと家に入れて、殺されたらどうする」
「お兄ちゃんは、悪い人には見えないよ。強そうだけど、優しそうに見える」
男は眉根を寄せた。
優しい。
そのように言われたのは初めてだった。
「だって、僕が声かけたとき、扉を閉めろって言ったじゃない。悪い人なら、そんなこと言わないよ」
利発な子どもだ。
だが、世間知らずでもある。
自分は確かに悪人ではないが、善人でもない。
あの時扉を閉めろといったのは、邪魔だったからだ。
勝てる見込みが辛うじてあったからこそ、出た言葉だったのだ。
死にかかっていたのなら、状況は違っていたはずだ。
言われなれぬ言葉を聞かされて反発しそうになるが、この少年が自分を助けたことには変わりない。
「命を助けてくれて礼を言う。子どもなのに、勇敢だな、お前は」
言われて、少年は照れたように笑った。
「ホントはね、怖かったんだ。少し、迷ったんだよ」