暁に消え逝く星

 それから一年、皇国に来るたびに、男は食材を買い込んでリュマと名乗った少年のところを訪れた。
 少年は嬉しそうに男を迎え、宿と食事を提供する。
 まるで歳若い父親と息子のように、二人で過ごした。
 男が驚くほど、少年は利発だった。
 男は国から出たことのない少年のために、外の世界のことをよく話して聞かせてやった。
 瞳を輝かせて話を聞く少年は、よく男を質問攻めにした。
 好奇心も旺盛で、会話をすることを楽しんでいた。
 少年は、代わりに自分の姉のことをよく語った。
 どうやら自慢の姉らしい。
 褒め言葉しか出てこない。
 姿かたちの美しさやいかに自分を大切にしていてくれるか、母親が少年を産んで三年ほどで亡くなったため、それからは母親代わりとして、一切の家事をしてきたので、何をやっても人並み以上に上手いこと。
 少年にとっては、姉は完璧な女だった。
 少年もとても愛らしい顔立ちだ。
 その姉なら、確かに美しいだろう。
 そして、女としても上等の部類に入るのだろう。


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