暁に消え逝く星
「お姉ちゃんに会いたいなあ。もう一年も、手紙だけなんだ。お姉ちゃんの手紙を持ってきてくれる人が、お姉ちゃんが働いているところは、なんだか意地悪なお姫様がいるところで、あんまり外に出してもらえないんだって言ってた」
美しい女官に嫉妬する姫なら、そのようなこともあるのだろう。
手紙をいくつか見せてもらうと、美しい文字が大きめに記してあった。
弟の近況を尋ね、自分の様子も弟が心配しないよう控えめに書いてある。
二年の年季奉公で皇宮にあがったため、途中で勝手に打ち切ることはできないのだ。
文字の読み書きができるのなら、この姉弟は、ある程度学のある親に育てられたに違いない。
皇国の内政が徐々に変わり、学問に対して、一般に門戸を開かなくなってから、十年以上が過ぎているのだ。
驚くべき識字率を誇っていた麗しの皇国は、今はもう夢のようだ。
貧民街までできつつあるのだから、よほど内政はおかしくなっているのだ。
歴史ある制度が、皇帝が代替わりしただけでこうも簡単に崩れたことが不思議だった。
まるで、意図的にそうしたかのように。
ここ数年で目に見えて乱れていく治安も気になった。
税金が二倍近くも上がり、物価も高騰している。
商売もなかなかうまく事が運ばない。
どこもかしこも物騒で、生活水準が目に見えて下がったことで、人々は殺気立っていた。
男はなるべく、少年には暗くなってからは外に出ぬよう言い含めた。
そして、簡単な護身術や短刀の扱い方も教えた。
そのぐらいしか、してやれることはなかった。