暁に消え逝く星
「しばらく、来れないの?」
別れ際にそう告げると、少年は目に見えてがっかりしていた。
ここでの商売はすでに終わっていた。
それでも、何度も足を運んだのは、この少年を家族のように大切に思っていたからだ。
気落ちしている淋しげな少年を見て、心が痛んだ。
まだ十にもならぬ子供なのだ。
たった一人の姉とも離れて暮らし、気丈にはしているが、心細くないはずがない。
「気をつけて。危ないことがあっても、怪我だけはしないで」
そう自分を見上げる少年に、
「リュマ、一緒に来るか?」
何の気なしに、男はそう聞いた。
少年は一瞬驚いたように、だが、嬉しいような困ったような表情で首を横に振った。
「――ううん。お姉ちゃんが戻ってこなきゃ、どこにも行けない。帰ってきたとき、僕がいなかったら、お姉ちゃんは心配する。泣かせたくないんだ」
小さいながらも一人前の男のような少年の物言いに、男は小さく笑って、小さな頭を撫でた。
「なら、姉が戻ってきたら、一緒に来い。お前は、俺の命の恩人だから、仲間はみんな歓迎してくれる。お前と姉ぐらい、余裕で養ってやれる」
少年も、笑った。
「いいね。お姉ちゃんに話してみる。手紙にも書いておくよ。一緒に行けたら、すごく楽しいだろうな」