暁に消え逝く星
「お願いです。大きな門ではなく、そこの、小さな通用門でいいんです。開けられないというなら、見逃してください。あたしが勝手に開けて出ますから、ほんの一時でいいんです。もう戻ってきません。出してくれるだけでいいんです!!」
必死の女の叫びも、男達には通じなかった。
「駄目だ駄目だ。俺達には、事前の許可が出ていなければ、扉に触れることさえできないんだ。破ったら、俺達の首がとぶ。外に出たいんなら、主に頼め。主が許可をもらえば、補給のための官吏が出て行くとき、一緒に出してもらえる。次は五日後だ。戻って朝に頼んでみろ」
「今出たいんです。明日には、荼毘にされるの。お願いです。ほんの少しでいいんです。あたしが出るだけ、通用門を開けてください。外に出して! 弟に、会わせて!!」
「俺達にそんなこと言われたって、どうしようもないんだ。開けてやりたいけど、無理なんだよ、娘さん」
女は、突如男達の脇を抜け、通用門へと走り出した。
「お、おい、こらっ!」
「待て!」
大きいほうの一人が、女を捕まえる。
「駄目だと言っただろう! あきらめて帰れ!」
「お願いです!! なんでもしますから、扉を開けて!!」
「いいかげん聞き分けろ! 女だからって容赦しないぞ!!」
女を引きずって、門番は水路の近くの橋まで、連れて行った。
そして、些か乱暴に、女を突き飛ばした。
石畳に倒れた女が痛みに呻くだけで起き上がる気配がないのにほっとして、門番は強い口調で言った。
「いいか、これ以上騒いだら承知しないぞ。大人しく屋敷に帰って、主に頼め」
門番が背を向けて去っていく。