暁に消え逝く星
女のどんな懇願をも聞き入れなかったあの、門番達が門扉を開けたのだ。
女が弾かれたように、動いた。
門へ向かって走りよろうと立ち上がりかけたその細い体に、男は手を伸ばす。
暴れられないように、細い両腕ごと片手をまわして自分の身体に押しつける。
もう片方の手で、女が声を出せないように口元を覆いながら。
華奢な女の身動きを止めるには、それで十分だった。
「すまん。だが、今行っても無理だ。出してはもらえない」
耳元で、短く告げる。
女の涙が、口元を覆った手に、感じられた。
暗闇の中、男は目をこらした。
馬車の窓から顔を出したのは、壮年の貴族の男だった。
門の両脇に備えられた篝火のほのかなゆらめきの中でも色褪せない、最高位の貴族のみが身につけること許された濃紺のショールが見えた。
それだけで、男には全てがわかってしまった。
「あれに、皇族が乗っている――」
小さく、男は呟いた。