暁に消え逝く星

 間違いない。
 いずれ来るであろう崩壊から逃れるために。
 近隣の国のどこかに援助を申し出るために行く豊かな国、そして、何かしらのつながりのある国。
 宰相の奥方はサマルウェア公国の出だ。
 そして、皇子の一人が、内密に第二公女と縁組を整えたばかりだ。
 行き先は、サマルウェア公国だ。
 皇子を連れて、宰相が直々に同盟を結ぶ気か。
 この内政が乱れきっている中で、政務を司る宰相を国外に出すなど、どれほど愚かなのだ。
 新たな怒りが、男の内に沸いた。
「――」
 皇子一行は、開かれた大門を抜けて、外へと出て行った。
 そして、大門は、何事もなかったかのように閉じられた。
 静けさが戻ってくる。
 男は、女から手を離した。
 そして、立ち上がらせる。
 女の目から、もう涙は流れていなかった。
 ふらふらと、女は来た道を戻る。
 男は、かける言葉を探せず、ただ少しだけ離れてついていく。


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