暁に消え逝く星

 見回りの一人がさらに問う。
「どこの侍女だ?」
「すぐここの、ほら、そこに見えてる門柱のお屋敷よ」
 女が指差した屋敷の門を見てから、衛兵達は同情とも苦笑ともつかぬ顔を見合わせた。
 女が言った屋敷の姫の噂は聞き及んでいたからだ。
 小さく何事か話し合った後、
「今日だけ見逃してやる。すぐに屋敷に戻れ」
 そう告げた。
「ありがとう。お礼に今度何か差し入れするわ。また夜の警備にあたったら、教えてちょうだい」
 男たちは笑いながら、手を振った。
 行けと言っているのだ。
 女がすぐに男の腕にすがったまま屋敷の裏手へと急いだ。
 先程女が飛び出していった通用門がある。
 それをあけて、男を中に引き入れる。
 扉を閉めて、男は大きく息をついた。


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