暁に消え逝く星
「私は、おかしいのか? だから、こんなことを思うのか?」
アウレシアは両手で優しくイルグレンの頬を引き寄せる。
触れるだけの優しいくちづけが、ささくれだった心を慰撫する。
「おかしくなんかないよ。人間なら、誰でも一度くらいそういう気持ちを持つもんだよ。あんた、ずっと我慢してきたんだろ?」
「――そうらしい。我慢していたつもりはなかったが、今日、人を殺して、初めて気づいた」
近すぎる距離で、アウレシアは微笑った。
「まったく、幸せなんだか不幸なんだかわかんない皇子様だね。我慢しても、いいことなんてないよ。もう少し我儘言いなよ。皇子様って、普通そんなもんだろ。付き合ったげるからさ」
「お前といるときは、我慢しなくてもいいのか?」
「いいよ。あんたの我儘なんて、かわいいもんさ」
軽くあしらわれて、イルグレンはむっとしたような表情になる。
「子ども扱いするな」
そうして、アウレシアの唇を塞いで、自分の上にいた身体を草の上に押し付ける。
「では、もう一度だ。今度は、私が上で」
アウレシアは笑ってイルグレンの首に腕を絡めた。
「いいよ、今度は、あんたが上で」