暁に消え逝く星
「今日はここまでだな」
ソイエライアの声で、その日の稽古が終わりを告げる。
「――あ、ありがとう……ございました」
息も絶え絶えなアルギルスの声が聞こえる。
残りは草の上に倒れこみ、満足に動けない状態だ。
「まあ、はじめにしちゃ頑張ったほうだな」
アルライカが座り込んだまま革袋の水を飲んだ。
それから、栓をしてソイエライアに投げてやる。
軽々と受け取ったソイエライアも、残った水を飲み干す。
「ああ、いい腕だ。この間の刺客より、筋がいい。東の護衛は質が高いな。護衛隊長仕込なら、ソルファレス様とも手合わせをしてみたいもんだ」
疲れたふうもなく、アルライカとソイエライアは座って話し込んでいる。
さすがに今日は護衛の稽古が目的なので、最初しか参加させてもらえなかったイルグレンは、体力的にはまだまだ大丈夫だったので、こてんぱんにやられて転がっている護衛達の元へ行った。
「どうだ、ライカとソイエは強かっただろう?」
気さくに話しかけられ、へとへとの五人が慌てて体勢を整えようとする。
「お、皇子様」
一番ましなアルギルスが剣を支えに立ち上がろうとするのを止める。
「よいのだ。座っていろ」
「は、はい――では失礼します」
なんとか五人全員が体を起こして座り込む。
イルグレンもそこに座り込む。
「命令だ。私を皇子と思うな。そのように扱ってもならぬ。渡り戦士達のようにグレンと呼べ」
「そ、そんな――」
「皇子などと呼ばれたら、近くに刺客がいたらすぐばれてしまうではないか。別に敬語も使わなくてよい。渡り戦士達のように話せ」
さすがにみんなは慌てる。
「それは無理です!」
「無理でもやれ!」
「せ、せめて敬語だけは許してください!」
「――では、全員に使え。それで誤魔化せるだろう」
「は、はあ……」
全員が弱りきったように顔を見合わせる。
稽古で翻弄され、今度は皇子の言動にも振り回されそうな予感に、彼らは慄いた。
そして、その予感は当たらずとも遠からず、現実のものになりつつあった。