暁に消え逝く星
イルグレンは、改めて護衛の五人をよく見た。
皆二十歳は確実に越えているだろうに、若々しくも見えた。
全員が歳も背格好も大体同じくらいだ。
その中に、唯一見知った者がいる。
ウルファンナの婚約者だ。
自分の身代わりに馬車に篭められていることは知っていたが、きちんと話をしたこともなかった。
眼差しは鋭いが、真面目そうな青年に見える。
「お前がアルギルスだな」
声をかけられ、アルギルスは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに敬礼した。
「はい、皇――グレン様」
「様もいかん」
「で、では、グレン、殿で」
「まあ、よかろう。そのぐらいなら」
イルグレンの妥協に、全員が胸を撫で下ろす。
自分達が守るべき皇子にぞんざいな口をきくなど、どうにも居心地が悪いのだ。
「ファンナとは、いつどこで知り合ったのだ」
いきなり話題を変えられて焦るが、それでも、アルギルスは真面目に答える。
「ええっと――八年前です、初めて会ったのは。ソルファレス様の下に配属されたので、宰相閣下のお屋敷に行く機会がありまして、そこで」
「八年? お前は幾つだ?」
「二十二になります」
「知り合って八年だと言うのに、未だ婚約とはどういうことだ。ファンナは私より年上だぞ。結婚していてもおかしくない歳だ」
「そ、それは――」
さらに焦るアルギルスに、横で見ていた護衛の一人――イルレオンが言を継ぐ。
「恐れながら、グレンさ――殿。ギルスは勘違いして、昇進するのを待っていたのです」
「おいっ」
アルギルスが慌てて止めるが、周りの護衛達は心なしかにやにやしている。