暁に消え逝く星
「――冗談だ。驚いたか?」
一拍後に笑いながら言われて、皆安堵するも、すぐに膝で詰め寄り、
「グ、グレン様。冗談でもそれだけはやめてください!!」
「そうです、ギルスの鬱陶しさを、グレン様は知らないんです! 最初に申し込みを断られてから、俺達が何度断られてじめじめして戻ってくるギルスを宥めたか」
「こいつは落ち込めば、三日は浮上しませんから!」
「全くです!! 俺達全員が五年つぎ込んだ酒で、湖ができるくらいです!」
泣かんばかりにイルグレンに哀願する。
様を殿に変えるのも忘れるほどの真剣さだ。
本人ではなく周りのあまりの剣幕に、今度はイルグレンのほうが驚いた。
「す、すまん。私がファンナを妻にするなんてことは天に誓ってないから、安心しろ」
片手をあげて宣誓すると、ようやく皆胸を撫で下ろした。
「よかったなぁ。冗談で」
「ああ、俺は地獄の五年間再び、かと思って血の気が引いたぜ」
「悶々とするギルスほど鬱陶しい奴は見たことないからな」
「やめろ、この五年間は俺の心の傷になっている。思い出したくもない」
最後の言葉に、皆うんうんと神妙に頷く。
「――お前ら、さっきから黙って聞いてれば!!」
それまで黙っていたアルギルスが静かに立ち上がって剣を抜いた。
仲間達がびっくりする。
「こ、こら。グレン様の前で抜刀するな!」
「そうだ、そういうのを不敬って言うんだぞ!」
「お前らの軽口のほうがよっぽど不敬だ!!」
剣を抜いて追い掛け回すアルギルスと慌てて逃げ回る仲間達を見て、イルグレンは楽しそうに笑った。