暁に消え逝く星
少し離れてそれを見ていたアルライカとソイエライアも、微笑ましげにその様子を見ていた。
「あの天然皇子は、ホントにどこででも生きていけそうだな」
アルライカの言葉に、ソイエライアも同意する。
「そうだな。あきれるほど素直だから、周りも絆されるんだろ」
「守る対象に親しみが持てるなら、守りがいもあるってもんだ。いいことだろ」
「まあな。あの天然皇子といると、つい構いたくなるからな」
最初のぎこちなさは、すぐに取れた。
若い者達は順応が早い。
護衛の者達は、歳も近く、気さくに話しかけるイルグレンに、敬語ながらも親しみを感じて接している。
そうして紛れていると、本当に誰が皇子かわからなくなってくる。
とりあえず今日一日は、刺客の気配は全くない。
あれだけで終わるわけはないが、時間稼ぎはできたものと二人は捉えた。
次の襲撃は、もっと本格的になるだろう。
幸いなことに、護衛の者達を鍛えるのはアウレシアが皇子を鍛えたよりもはるかに短期間で終えられると踏んだ。
やはり職業軍人として鍛えられた者は違う。
今日一日の戦いぶりを見ても明らかだった。
「あんな若い奴らが死ぬのは、見たくないな」
思わず漏れたソイエライアの言葉に、アルライカは肩を竦める。
「死なせずに連れて行くのが、俺らの仕事だ。大丈夫さ――腹が減ったな。戻るか」
そうして立ち上がる。
「ああ」
二人はまだ走り回れる元気のある皇子と護衛達に声をかけるべく、歩き出した。