暁に消え逝く星
 眠りについて、何かが動く気配に気づいた。
 天幕の中は暗く、入り口近くのアルライカの大きな姿はなく、空の毛布だけが置かれたままだ。
 アルライカが火の番を交代しに行ったのだろう。
 もう一度眠りにつこうとうとうとしかけ、不意に、天幕の中に人の気配を感じた。
 アルライカではない。
 刺客か。
 咄嗟に枕元の短刀に手が伸びる。
 だが、殺気もない。
 そっと目を開ける。
 暗闇にほのかに浮かび上がる長い髪を結い上げた輪郭。
 この気配は――
「レ、レシア?」
 声を潜めて問う。
 間近になって、ようやく判別できた。
「あ、気づいたか。殺気も出してないのに気づくとは、やるな」
 身体を起こすと、アウレシアはすぐ近くにいた。
「どうしたのだ。何かあったのか?」
 一瞬、何か起こったのかと思ったのだ。
 だが、アウレシアは人差し指を口にあて、静かに告げる。
「夜這いに来た」
「はぁ?」
 訝しげな顔つきで、イルグレンはアウレシアを見つめた。


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