暁に消え逝く星
嬉しさを隠しもしない皇子の様子に、アウレシアは溜息をついた。
そろいもそろって、この天然皇子に甘くなってしまった。
最後まで強く反対できないのは、自分も含めて皆が、この皇子に許された自由が今だけだと知っているからだろう。
「仕方ないなあ。ケイに怒られるのはライカだけってことで」
「なんで俺だけなんだよ! ソイエも賛成したろうが」
「まあ、そこは日頃の行いがものを言うんだ」
涼しい顔でソイエライアが肩を竦める。
イルグレンが慌てて口を挟む。
「大丈夫だ、ライカ。怒られるなら一緒に怒られよう。私の命令だと言えばいい。そうだな――連れて行かないと毎日夜まで稽古につき合わせると脅されたと言えばいいのだ」
にやりとアルライカが笑う。
「そうだな、皇子様の命令に逆らっちゃぁいけねぇよな」
「そうとも。そんな不敬は許されん。私に逆らったらその首を落とされるぞ」
イルグレンも笑いながらアルライカに合わせる。
「よし、皇子様のご命令だから、俺は馬の準備をしてくるぜ。では、失礼」
渡り戦士らしからぬ優雅なお辞儀をして、アルライカは鼻歌を歌いながら馬を繋いであるところまで歩き出した。