暁に消え逝く星
森の中を街道沿いに馬を走らせると、鬱蒼とした木立がさらに周囲を陰らせていた。
太陽は南西に向かい、すでに木立から見え隠れしている。
夕暮れまでにはまだ時間はあるが、長い時間一行から離れてはまずい。
食事の準備までには戻らないとリュケイネイアスにばれる恐れもあった。
街道が徐々に蛇行のうねりを見せ始めると、馬の速度も緩やかなものへと変わる。
「よし、ここからは少し歩くぞ。街道を離れるから、俺の後ろをついてこい」
アルライカはアウレシアとイルグレンを振り返った。
三人は馬を街道からは見えないところに隠し、道を離れて徒歩で進む。
鳥のさえずりと、風に揺れる濃い緑がとても近いのに、イルグレンは驚いた。
「森の中を歩くのは気持ちがいいものなのだな」
「なんだい、散歩してるんじゃないんだよ」
アウレシアが小さく笑った。
「しかし、なぜ今日に限って、森を偵察するのだ?」
「んあ? ああ、明日ここを越えれば、森が終わって、また見晴らしのいい乾燥地帯に入るからさ。もし、刺客がまた襲ってくるなら、必ずここで仕掛けてくると思ってな」
「なるほど。ライカは地理にも詳しいのだな」
「まあ、昔ここで何ヶ月か過ごしたこともあるからな」
「この森の中で? 一人でか?」
「いや、ソイエもだ。ここは山に近い森だから、洞窟や、川や、小さな湖もある。食うには困らなかったな」
言いながらも、アルライカは音を極力音を立てぬように下生えの草や茂みを上手に避けるので、歩いていても大変ではなかった。
周囲にも気を配りつつ進んではいるが、どうものんびりした気分になってしまうのは否めなかった。