暁に消え逝く星
「何なのだ、あの女は!? 無礼にも程がある!!」
馬車に戻るなり、怒りも露わに皇子――イルグレンは叫ぶ。
動き出した馬車がどこに向かっているかは知らなかったが、今の彼にはどうでもいいことだった。
剣の勝負をしている最中に足技を使うとは。
そのせいでせっかくの打ち合いがあっさりと終わってしまった。
まだまだ打ち足りないというのに。
同じ馬車に乗り込み、黙って聞いていたエギルディウスは、イルグレンが剣を外し、座り込むと同時に口を開いた。
「不用意なお言葉でした」
「何がだ、エギル」
「女戦士に向かって護衛がつとまるかなどと面と向かってお尋ねになったことです。数は少ないですが、女にも戦士はおります。わが国にいなかっただけです」
静かに言われて、イルグレンは眉根を寄せる。
「そうなのか。他の国には珍しいことではないのか」
「はい。女戦士の怒りは尤もでございましょう。侮辱されたのと同じですから」
「侮辱したつもりはない」
「女戦士はそうとりました」
「――そうなのか…」
先ほどまでの怒りが引いていく。