暁に消え逝く星
復讐の手前で
三日と半日かけて、一行は砂漠を越え、森林地帯へと入っていた。
街道を離れた別の道を走り、待ち合わせた場所へと着くと、先に行かせていた見張りの男達が五人、一行を迎えた。
「統領!!」
男は馬を降り、女を降ろした。
走り寄ってくる男が二人、その内の一人は伝令として先日駆けつけてきたハラスだった。
「間に合ってよかった。こっちへ」
腕を引いて残りの三人のところへ促す。
広げられた地図のところでなにやら話し合う男達を、女は黙って見ていた。
追手はすでに皇子に追いついたのか。
いや、そうならばもっと慌てふためいているはずだ。
この三日で、女はさらにやつれていた。
馬を駄目にしないためだけの最低限の休息で、昼も夜も走り続けたのだ。
逸る気持ちから、旅食さえほとんど喉を通らず、水しか飲めなかった。
今も、疲れていて、倒れてしまいたかった。
それでも、女は強い意志で自分を奮い立たせていた。
皇子の首を――最後の復讐をやり遂げる時が来たのだ。
なんて長かったのだろう。
故国の皇宮の広場でたくさんの首のない死体を前に立っていた、あの時から。
これで、最後だ。
この復讐が終わったら、楽になれる。
怒りと憎しみを、女は再び甦らせた。
それが、最後の務めを果たす原動力になる。
座り込んで眠ってしまいたい衝動が霧散する。