暁に消え逝く星
エギルディウスの言葉で納得した。
なぜ急に女戦士が怒りを露わにしたのかも。
だが、イルグレンのほうには悪気は全くなかった。
本当に疑問だったのだ。
故国では女の戦士などいなかったから。
彼にとって女というものは、か弱く、守らねばならぬものでしかなかった。
目の前にいる年上の侍女ウルファンナでさえもだ。
初めて見た。あのように戦う女など。
しかも、彼女の戦う姿は――美しかった。
流れるように動く手足。
その所作の一つ一つが男にはない滑らかさを映し出す。
まるで舞を舞うかの如くに。
打ち合ってもすぐに風のように横に流れ、力を感じさせない。
体力的に劣る女戦士が自然と身につけた技なのか、見事としか言いようがなかった。
最後には、あまりに見事な動きに見惚れて剣を跳ね飛ばされるという失態もしてしまった。
「――」
最後のあの蹴りには、まだ納得がいかないが、確かに生死を懸けた戦いであったなら、自分は文句一つ言えず死んでいるのだ。
剣技とは、本来殺し合いだ。
自分が学んでいた剣は違う。
生死と関わりのない遊びだ。
作法など、必要ない。
生きるための剣でいい。
そのような剣を、自分は学びたい。
まさに、あの女戦士のような剣を。
あの美しい動きを、剣さばきを、もう一度見たかった。
「イルグレン様。御身は皇国の最後の継承者なのです。そのお立場を忘れぬよう」
エギルディウスのお小言も、すでに皇子の耳には入っていなかった。
確かあの女戦士は、また来いと言った。
ということは、また勝負してもよいと言うことだ。
あの暴言を取り消させるには、自分が彼女に勝たねばならない。
勝つまで、勝負すればいいのだ、この旅の間に。
馬車と宿屋に閉じ込められて半月。
イルグレンはすでにこの道中に飽きていた。
明日はウルファンナにもっと質素な服を用意させねばならない。
皇子は心の中でほくそ笑んだ。