暁に消え逝く星

「私の命が目的なら、なぜ今殺さない? お前も誰かに雇われているのか?」
「死んでいくお前に、知る必要があるのか?」
 短く言い捨ててから、男は不意にイルグレンに向き直った。
 跪く、今は皇子とも思えないイルグレンを、じっと見据える。
「いいや。お前こそは、知るべきだな。己れの罪を。お前が生きているということだけで今も苦しみ続ける人間がいることを。お前の中に流れるその血こそが、全ての罪だということを――」
 風が騒めく。
 雲が足早に太陽を遮り、暮れかけの光さえ届かない。
 夕闇を一層色濃く染める夜の先触れがやってくるのを、イルグレンは感じた。
 それはまるで死の先触れのように静かに忍び寄る。

「お前をこの世で最も憎んでいる女が来る」

 無感動に、男は言い捨てた。




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