暁に消え逝く星

 死ぬことすらできない。

 リュマの所へ、いけないのだ。
 それさえも、許されない。
 女は振り切るように男から視線を外した。
「――弟を見殺しにしただけでなく、自分の国さえ滅ぼした。もう、何処へも帰れない。
 それでも、あたしは生きるの?」
 女の体は震えていた。
 華奢で脆く、か弱い、守るべき女だと、男はいっそう愛おしく思った。
「それでもだ。国が滅んでも、人は生きていける。滅ぼすことで、お前は古い因習にがんじがらめになっていた国と人を救ったんだ。もう、いいんだ」
 女の体を支えていたむきだしの腕に、温かな雫がこぼれた。
 最初は一粒。
 それから、何度も、何度も、熱い涙がこぼれるのを、男は感じた。
 復讐を誓ってから、女が流す初めての涙だった。

「夜明けが初めに生まれた国は滅び去ったが、夜明けとともに生まれた地は、これからも永遠に続くだろう。もう二度と、餓えて死んだりする人間がいないように――」

 ようやく声をあげて泣いた女を、男は抱きしめたまま放さなかった。




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