暁に消え逝く星
大事な話をしに来たのだ。
「レシア、旅が終わったら、お前はどうするつもりなのだ」
「決まってる。次の仕事をするまでさ」
さらりと返ってくる答。
立ち止まり、覚悟を決めたようにイルグレンは言った。
「ともに来てほしいと、言ったら――?」
振り返り、アウレシアは笑った。
「何の冗談だよ、それ」
「私は本気だ」
真剣に彼女を見つめるイルグレンに対し、アウレシアは今度は声を立てずに微笑った。
「行かないよ」
あまりにも簡単な拒絶だった。
まるで散歩の誘いを断るかのように。
「レシア」
「行けるはずないだろ。あんたと一緒に行って、それでどうしろって言うのさ。
あたしにご立派な、生命の危険なんて起こりっこなさそうに平和なお城の中であんたを守ってろって言うのかい?」
「違う、私の言っているのはそんなことではない。お前を護衛として雇うと言っているのではない。私の――私の妻として来てほしいのだ」
「それこそ冗談じゃないよ。あんたはあたしに剣を捨てろって言ってるんだ。あたしは戦士だ。それがあたしの生きる意味の全てだ。それを捨てるって言うのは、あたしに死ねと言っているのと同じことなんだ。あんたはあたしを生殺しにする気かい?」
「レシア……」
「わかってたはずだろ? あんたは皇子様で、あたしは雇われの渡り戦士。あたしたちはお互い、本当なら交わらない道の上で、偶然会っただけなんだよ」
とても遠いと、イルグレンは感じた。
すぐ側にいるのに、アウレシアの言葉も、自分の言葉も、互いには届かないように。