暁に消え逝く星
本当に欲しいもの
「大公は、どういうおつもりなのだ!」
突然の前方からの声に、イルグレンははっと目を開ける。
綺麗に駆り整えられた木立の向こうは本宮の手前らしい。
木陰から除くと、会議が終わったらしい大臣が中庭に面する回廊で、数名集まってなにやら顔を険しくして話し合っている。
「大臣方――」
低く響く声は、聞き慣れたものだった。
それまでの話がぴたりと止まる。
エギルディウスは優雅に一礼すると大臣達を見回して声をかける。
「我が故国のことでは、皆様方には無用のご心配をおかけすることになり、申し訳なく思っております。ですが――」
もう一度大臣達を見回して、言を継ぐ。
「この同盟が結ばれた時点で、多額の持参金が御国には支払われておりますこと、まさかお忘れではありますまい」
大臣達の顔色が変わる。
国の予算にして半年分が埋まるほどの金と宝石をすでに受け取っていることは事実なのだ。
同盟は正式に成立している。
この期に及んで騒ぎ立てることなど、本来はできないことに、今更ながら気づいたのだろう。