暁に消え逝く星

 公女が侍女達に促されて戻っても、イルグレンは四阿に座ったまま動かなかった――否、動けなかった。
 公女の言葉が、自分を動けなくしていた。

 皇子――それが自分。

 国が滅びようと、それは変わらない。
 永遠に。
 それ以外の何者になれるというのだ。
「――」
 強く唇をかみしめる。
 では、それ以外の何にも、自分には、決してなれないのか――?
 皇子以外にはなれないと。

 皇子としてしか、生きられないと。



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