暁に消え逝く星
夜明けの紫
サマルウェアの一つ手前の砂漠のオアシスにあるレギオンで、アウレシアは次の仕事の情報を受け取った。
ソイエライアの話では、南下した港町で砂漠を北上する隊商の護衛の依頼だということだったが、詳しい話をレギオンで聞くと、どうやら大掛かりな移動になるらしい。
出発は二週間後、馬をとばせば余裕でそこまでは行き着ける。
砂漠の盗賊団の動きが活発になっている昨今では、珍しい仕事ではなかった。
リュケイネイアスも許可したのなら、堅実な、実入りのいい依頼であろう。
四人で組むようになってからは、彼は、決して真っ当でない依頼を受けなかった。
全員の命がかかる仕事で、無用の危険を冒さぬように。
そういう気遣いができるからこそ、自分達も彼についていくのだ。
リュケイネイアス達は、港で次の旅に備えての物資や新しい剣を調達している。
今回、使いを自らかって出たのは彼女自身だ。
何故だか無性に馬を走らせたい気分だったのだ。
じっとしていられない、いつもとは違うその衝動を、周りには知られたくなかった。
じっとしていると、イルグレンのことを考えてしまう。
今回の仕事では破格の報酬を貰い、北の極上品である火酒まで手に入れて、この一週間、夜は四人で酒場へ繰り出し、飲めや歌えやの大騒ぎで、全くイルグレンのことを考える暇などなかった。
いや、違う。
考えないようにしていた。
考えてしまえば、きりがなくなる。
終わったことをいつまでも気にするのは性分に合わない。
アウレシアはさらに、馬を急がせた。