暁に消え逝く星

 砂漠の終わりと言えども、夜はまだまだ冷える。
 夜通し走りぬけ、無事用事も終えて後は帰ればいいだけ。
 それでも、なおも彼女は馬を走らせる。
 しかし、夜明けが近づくにつれて、馬の疲労が顕著になったので、ようやく彼女は速度を落とす。
「ごめんよ、とばしすぎた」
 呟いて馬を止める。
 そうして、馬の首筋を撫でて、明るくなり出した空に目を向けた。
 あけていく薄紫。
 星が静かに消えてゆく。
 あの時二人で見た夜明けの空。
 イルグレンの瞳の色だと、アウレシアは思ってしまった。
 そうしたら、自分でもびっくりすることに、涙が流れてきてしまったのだ。
「なんだよ、これ」
 乱暴に拭って、アウレシアは呟いた。
「男なんて掃いて捨てるほどいるだろうが」
 らしくないと、アウレシアは思った。
 別れた男を想って泣くなど。
 しかも、相手は年下の、天然の皇子様ではないか。
 全くどうかしている。


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