暁に消え逝く星
アウレシアが皇子の相手をする羽目になってしまっているとき、リュケイネイアスはソイエライアにことわってその場を離れ、エギルディウスのもとへ向かっていた。
皇子のための馬車の後ろは、エギルディウスのものだ。
扉をたたくと侍女のウルファンナが扉を開けた。
「エギル様は?」
ウルファンナが答える前に、
「入るがよい」
穏やかに響く声が返る。
中に入ると、エギルディウスは食事中だった。
しかし、あまり手がつけられた様子もないところを見ると、食欲がないらしい。
「皇子様が一人で俺らのところに来ましたよ。勝つまで、これからは剣の勝負をするそうです」
「えぇ!?」
エギルディウスより、侍女のウルファンナが叫んだ。
「ファンナ。イルグレン様は馬車にいないのか?」
「ゆ、夕食まで眠るとおっしゃって、お食事も少ししか召し上がりませんでした…先ほど様子を見に行きましたら、寝台の幕がかかっておりましたので、てっきりお休みなのかと…確かめて参ります!!」
慌てて、出て行く侍女を一瞥してから、
「女戦士は皇子の申し出を受けたのか?」
困ったように問うた。
「とりあえず、今日のところは。不本意そうでしたが。これから、どうします?」
「馬車に閉じ込めておくのも限界のようだ。もしも女戦士が引き受けてくれるなら、護衛がてらに剣の相手をしてやってくれ」
「いいんですか?」
「皇子自身が望んでいるのなら良い。自分の命は自分で護れねば。女戦士には、その分の報酬はすると伝えてくれ。代わりに、皇子を鍛えてくれるようにともな。世間知らずだと思うだろうが、心根は優しく、素直なお方だ」