暁に消え逝く星
旅も順調に過ぎて、今日は山間を越えて下り切った麓の小川沿いで夜を明かす予定だった。
砂漠を迂回した道のりは、命の危険こそないが、長く、険しい山脈や悪路も多い。
しかも馬だけでない、馬車を伴っての移動はどうしても時間がかかる。彼らの一日の移動は馬の疲労を考えても七時間が限度だった。
朝早くから山を登っていた一行の昼食は、旅用の携帯食のみだった。
今日は日が落ちきらぬうちに移動をやめ、野営をすることになっていた。
予想以上に時間のかかる下りを、無事に下り切って、続く森を抜ける頃には、日は真南より西側に大きく傾いていた。
あと3時間もすれば、日も沈むだろう。
移動をやめ、野営の準備をするにはちょうどいい時間帯だった。
先導の護衛が川に向かって道を外れ、丈の短い草原を進む。
リュケイネイアスは、先導のため、ソルファレスとともにいるので、今日のしんがりは残りの三人だった。
「ようやく到着か。ライカ、今日の飯は俺らだぞ」
ソイエライアが隣のアルライカに声をかける。
「おう。夕食のために、山で二羽仕留めといたこいつをつかうぜ。ソイエ、パンはお前な」
「ああ、レシア、今日は早めに切り上げて戻ってこい」
「はいよ」
先を見ると、どうやら馬車が止まったらしい。